痔核(いぼ痔)の治療

 いきなり手術ではなく、まず保存的治療を行います。保存的治療とは食生活の改善、排便習慣の改善、内服薬、軟膏等による薬による治療のことです。内痔核の分類には下記の「Goligher分類」があります。  ※Goligher(ゴリガー)分類=内痔核の臨床病期を評価するためのスケール

内痔核のGoligher分類
Ⅰ度:直腸の内腔に突出する内痔核組織の腫大を認め、排便時には時に出血する。
Ⅱ度:排便時に肛門外へ脱出するが、自然に還納する。
Ⅲ度:排便時に肛門外へ脱出し、用手還納を要する。
Ⅳ度:還納不能。排便時以外でも脱出する。

痔核の重症度と治療法

痔核(いぼ痔)
● 食生活の改善

 野菜、果物などの食物繊維の摂取により便通をよくして、いきみの習慣を避けることが大切です。
 また、最近は湯船につからずシャワー浴でお風呂をすます人も増えてきましたが、痛み・出血などの局所の血流障害を伴う痔核はしっかり温める「温浴療法」が大切です。シャワー浴だけでなく、湯舟にゆったりつかりましょう。

● 薬による治療

 便秘は痔疾患によくありませんが、下痢もまたよくありません。薬による治療で下痢・便秘などの便通を調節します。
 また、痔の内服・軟膏薬は痛みや出血の緩和に効果がみられますが、一定期間使用しても痔核自体が消失するわけではないので、その治療にはおのずと限界があります。脱肛症状を消失させる効能はないため、GoligherⅢ度、Ⅳ度の脱肛には無効です。

● 手術による治療
日帰り手術

比較的軽度の痔核では局所麻酔で行う日帰り手術を行います。

① 痔核硬化療法 …… ジオン注射により痔核を硬化させます   ≫ジオン注射について詳しくはこちら
② 痔核根治術 …… 比較的小さく軽い痔核は局麻下に切除を行う事があります
③ 外痔核血栓除去術 …… 局麻下に血栓を除去します
④ 皮膚垂切除術(skin tag 切除)…… 皮膚のたるみを除去します

入院による手術

脱出を繰り返し、自然には戻らず手で戻す痔核(GoligherⅢ)、常に出ている痔核(GoligherⅣ)は、腰椎麻酔による手術が必要です。

当院では、
・結紮切除術 …… 痔の血管をしばり、痔核を切除します
を基本として、
・痔核硬化療法
・痔核分離結紮術 …… 痔核をしばり時間をかけ脱落させます
を組み合わせて手術を行っています。

基本的には、腰椎麻酔(腰に注射をする下半身麻酔)を行います。※ 抗凝固剤(血液サラサラ)を内服している方は腰椎麻酔が行えないので局所麻酔で手術を行います。

入院期間は、基本的には6泊7日ですが、術後の傷の状態や患者様の希望によっては、期間の短縮・延長を行っています。(2〜3泊で帰る方、2週間入院を希望される方もいらっしゃいます)
入院中は、創の状態の確認、術後出血の経過観察、術後創部痛のコントロール、排便の調節を行います。

◆ 入院は必要?
なぜ日帰りではなく入院が必要なのかと疑問に思う方もいるもしれません。
入院が必要な理由の一つに、術後の大量出血の予防があります。手術の1週間後くらいに約0.2%の確率で「術後晩期出血」が起こります。晩期出血の出血量はかなり多量になるので、起こった場合は再び腰椎麻酔下で止血術が必要となることもあるのです。
また、術後創部痛のコントロールは鎮痛剤の内服で十分可能ですが、痛みが強い場合は点滴による痛み止めを使う場合もあります。入院中ならいつでも行うことができるので安心です。

裂肛(切れ痔)の治療

 裂肛は便秘や下痢便の排出により生じた肛門上皮の浅い裂創から始まり、慢性化すると筋層まで達する潰瘍となり肛門狭窄を合併することあります。痔核と同様に保存的治療(食生活の改善、薬による治療)を行い、慢性化した場合には創、潰瘍を含めた裂肛の切除・解放術を行います。肛門狭窄をきたした場合は、肛門狭窄拡張術(SSG法:sliding skin graft 皮膚弁移動術)を行います。

 裂肛の切除・解放術、肛門狭窄拡張術は、入院し腰椎麻酔下で行います。入院期間は基本的には6泊7日ですが、術後の傷の状態、患者様の希望によっては期間の短縮・延長を行っています。

裂肛(切れ痔)
痔瘻の治療

 痔瘻は薬だけでは完治が難しく、手術による治療が必要です。
 肛門周囲が腫れる「肛門周囲膿瘍」で始まります。肛門周囲の腫脹、熱感、発赤を認め、強い痛みが出現し、場合によっては高熱を認めることもあります。

 肛門周囲膿瘍は、外来で局所麻酔下において切開排膿術を行います。慢性化し疼痛、排膿を繰り返す場合は入院し、腰椎麻酔下において痔瘻根治術(瘻管解放術)を行います。
 入院期間は基本的には6泊7日ですが、術後の傷の状態、患者様の希望によっては期間の短縮・延長を行っています。

 瘻管解放術は浅い痔瘻、単純な痔瘻に対して行います。複雑な痔瘻や、深い痔瘻は総合病院に治療を依頼する場合があります。

痔瘻
手術料金について
手術名
1割負担の方
3割負担の方

日帰り手術

痔核硬化療法(ジオン注)

約6,100円

約18,300円

痔核根治術・皮膚垂切除

5,600円~7,400円

16,800円~22,200円

外痔核血栓除去術

約1,800円

約4,500円

肛門周囲膿瘍切開排膿

約2,500円

約7,000円

入院手術(入院7日間)

痔核根治術

60,000円~80,000円

100,000円~120,000円

痔瘻根治術

70,000円~90,000円

120,000円~130,000円

肛門狭窄拡張術

60,000円~80,000円

100,000円~120,000円

※上記手術料金はあくまで概算です。入院期間、使用する薬剤等によって変動します。